実際、生徒によれば、これだけ質問等がある講義も珍しい。
先に日本での関心の高まりを紹介したが、全体として日本は関心が高まっているにとどまって、実践の面では遅れを取っているとみる方が適切であろう。 では、なぜ各国はイスラム金融に注力するのだろうか。
イスラム金融が急成長している有力市場であるということが、その主な要因の一つであることに異論はあるまい。 イスラム金融の市場規模に関する公式統計はないが、その成長率については概ね17%と言われる。
同じようにイスラム金融の先進国であるバーレーンで中央銀行が発表している統計の伸び率をみても、イスラム金融の銀行資産は、この4年間で平均17%の伸び率となっている。 仮に別%の成長が今後続けば、5年で現状の2倍を超え、加年で5倍を超える計算となる。
こうした状況をみて、イスラム金融は世界で最も急速に成長している金融分野とも言われるのである。 イスラム金融は、なぜこれほど急速に成長し、多くの人の注目を集めるに至っているのか。
その成長の要因を、これまでにみられた種々の指摘に基づき整理してみよう。 まず、指摘の必要もないほど当然のことであるが、何と言ってもペトロダラー(オイルマネー)である。
原油価格をその代表的指標であるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)ベースでみると、2003年の原油価格は30ドルほどであったが、2008年には一時140ドル台に達している。 イスラムの本場である中東圏では産油国が多いため、各種投資会社等の運用資金の拡大、経済成長に伴う個人資産の増加、設備投資等に伴う種々の資金需要などにより、イスラム金融の成長を需要面から促している。

この背景として、中東ペトロダラーの投資先について、1970〜80年代には欧米中心だったが、今回の局面では、中東域内に向けられる部分も多いという点も影響していよう。 そうした中で、少なからぬ量の投資資金がイスラム金融方式で投入されているのである。
しかしながら、イスラム金融の成長はペトロダラーのみによって支えられているわけではない。 確かに、イスラム金融の成長に占めるペトロダラーの寄与度は大きいだろうが、それだけだと捉えると、イスラム金融の本質を見誤ることにもなりかねない。
ペトロダラーの増大に加えて重要な要因として、イスラム社会内部でのイスラム回帰の強まりが挙げられる。 1980年代前半におけるイランやパキスタンのイスラム化、近年みられるイスラム諸国会議機構(OIC)の結束力の強まり、各国政府・団体等によるムスリム・アイデンティティの啓蒙などは、いずれも全体的なイスラム回帰傾向を表している。
こうした中で、預金やローン等の個人レベルでの金融サービス利用や、企業・金融機関レベルでの資金調達や資産運用などの場面で、より教義に沿った金融行動を採ろうという動きも強まっているのである。 実は、今日で言うイスラム金融は、イスラム社会に古くからあったわけではなかった。
近代的なイスラム金融が発生したのは1970年代半ばのことに過ぎない。 過去には、そしてその名残で現在でも、ムスリムは利子を伴う一般の金融(しばしば、コンベンショナル金融と呼ばれる)を教義とは別の次元で利用せざるを得なかった面も大きい。
しかし、教義に即した金融があれば、そちらを利用したいというのは教徒の自然な行動原理である。 全体的イスラム的な生活を送ろうとする傾向の中で、金融についてもイスラム方式を利用しているといった面も、イスラム金融の成長の根底にある大きな理由である。
イスラム金融の中長期的な成長要因として、イスラム圏が高度成長の段階を迎えているということも見逃せない。 前述したように、原油高景気で種々の取引需要が生じているという面もあるが、イスラム圏経済の成長は、日米欧の先進国や韓国・シンガポールなどの新興経なお、2001年9月n日の米国同時多発テロが、中東投資家の米国からの資本流出を産み、それが中東圏への投資に振り向けられたことが、イスラム金融の増加要因の一つとも言われる。

この影響は確かにあっただろうが、その効果は限定的と私はみている。 実際、中東国家等が原油輸出で得たドルは、まず米国債で保有されることが多いことからみても、9.U要因は少なくとも現状には当てはまりにくいものと思われる。
ただ、こうした一時的増加が呼び水となって、一層のイスラム金融需要につながった面もあるだろうし、その寄与度は別として頻繁に指摘される点でもあり、参考情報としては興味深い指摘である。 済国に比べて総じて遅れ気味だったという事情もあり、原油高という追い風とも相侯って今まさに高度成長を遂げようとしている段階に来ているのである。
加えて、長期的経済成長を支える要因でもある人口増加率も、それ以外の地域・宗教に比べて高い。 このことはイスラム金融の潜在市場規模の拡大につながっているとみてよいだろ急成長のこれまで需要面の動向について述べたが、イスラム金融の供給サイドの要因もしっかりと理解しておく必要がある。
すなわち、イスラム金融のサービスや取引が拡充されることで、イスラム金融市場の成長につながったという観点である。 先に簡単に触れたように、イスラム金融の歴史は実は比較的浅い。
その起点とされる事象はいくつかあるが、概ね1960から70年代の半ばとみておけばよい。 つまり、イスラム金融はせいぜい30年から40年程度の歴史しか持たないということである。
そして、禁忌である金利(リバー)の概念を使わずに金融を行なうにあたっては、次で述べるように、さまざまなイスラム金融のスキーム概念が開発されてきた。 また、教義に反さないようにするため、金融取引の構造や取引の形態・様式、資金使途の制限等の面において、これまでに多くの進展がなされてきた。

しかし言い換えれば、利用可能なイスラム金融取引は徐々にかつ着実に発展してきたのであり、こうした供給面での進展が仮になかったとしたら、いくら需要があったとしても、これほどまでにイスラム金融が発達することはなかったと思う。 イスラム金融方式で可能な取引の種類は、今日においてでさえまだまだ拡充を続けており、コンベンショナル金融へのキャッチアップ、そしてそれを乗り越えた機能の提供を目指して、金融業界やイスラム法学者(取引がイスラムの教義に沿っているか認定する学者)が努力を継続しているのである。
量的な面でのイスラム金融取引需要の多さは言うまでもなく、投資家のニーズに合った魅力的商品やリスク・ヘッジ・ツールなど種々の金融機能に関する需要も高く、それに応える取引・商品が開発されれば一層の市場の拡大につながる。 その意味で、イスラム金融の成長性には将来にわたって期待が持てると言ってよいだろう。
供給サイドの拡充をみる上では、海外進出や支店網拡充といった、面の拡張の観点も忘れてはならない。 この点を分かりやすく説明するため、敬度なイスラム国であるA国の状況を想定して論じてみよう。
「A国では郊外に多くの人が居住している。 皆、宗教心に篤く、できればイスラム金融を利用して貯蓄などを行ないたい。
が、近隣にはイスラム銀行がなく、あるのは全国展開をする地場の大手有利子銀行のみ。


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